2022年7月22日

イマドキ家族の家づくり3つのポイント【新しい暮らしに対応するスペース編】

皆さん、こんにちは!遊建築設計社の松浦です。
このシリーズでは、共働き・子育て世代に選ばれている『人気の間取り』についてお話しさせていただきます。

私たち遊建築設計社では、20年を超える期間の中で、毎年500プラン以上の間取りを計画してお施主さんにお届けしています。
当然ながら、間取りは、建物の性能・技術力の向上や、住まう人の価値観の変化に伴って絶えず移り変わってきました。住まいは、時代と共に志向される暮らし方も生活空間も異なるのです。

本シリーズでは、現在の共働き世帯や子育て世代が求める住まい方を『イマドキ家族の家づくり』と称してご案内いたします。

特に、彼らが「過ごしやすさや暮らしやすさ」のために住まいに取り入れたいことを「3つのポイント」にまとめ、順を追ってお話しいたします。

【3つのポイント】
■ ゆとりある生活を過ごすための『収納』
■ 使い勝手にこだわった『水廻り』
■ 新しいライフスタイルのための『+スペース』

また、私たちは、日々の業務の中で時代の変化を捉えて住まいを計画し、それらを集めて「間取り集・ベストセレクション」を毎年制作し続けてきました。参考資料として添付させて頂きました間取りは、その間取り集に収録されているものです。
解説も含めてご覧ください。

トレンドを捉えた「間取り集」の詳細はこちらからご覧頂けます。

それでは、今日明日に役立つ内容ですので、最後までお読みください。

新しいライフスタイル『+スペース』

近年の一次取得者層となる共働き・子育て世代は、豊富な情報がある中で生活しており、常に新たな価値観を見出し続けています。
したがって、生活スタイルに対する考え方がかわり、新しいスペースを求め、今までと異なる生活空間が出現し、それを可能とする建物性能を要求することになります。

もちろん、それは限られた予算の中でのことです。むしろ、人生設計の中で住宅に掛けられるコストを決め、その範囲内で具現化できるものを求めていると言っても良いかと思います。

彼らの基本的な志向は、家族をとても大切にし、共に生活するにあたって何が重要で、何を必要とするかを選別することのようです。

建物計画として少し言い換えれば、どんな生活を大切にしたいか。そのためには、住まいに何を設けたらよいか。それは、何処にどのくらいの大きさが、適当な広さが必要なのか。という問いかけから家づくりが始まるといえます。

以上のことから私たち設計屋は、可能な限り延べ面積を抑えながら、共働き・子育て世代の新たなニーズにこたえるためにプランニングしています。それが、新しいライフスタイルを求めた「+スペース」計画なのです。

それでは、これから代表的な「+スペース」を2つご紹介いたします。

コロナ禍の中で変わってきた住まい

コロナ禍によって、家づくりの中で一気に変化が進んだことがあります。
それは、健康面・衛生面に関する考え方と、在宅勤務の推奨による仕事スペースの確保です。

どちらも、コロナ禍以前から提唱されていたことではありましたが、今は皆さんがこれに対する解答を持って家づくりをおこなっています。

健康管理を考えた「洗面コーナー」

一つ目は、家族の健康面や衛生面を考えて、いつでも誰でもが使える「洗面コーナー」を設置するようになってきました。それも、帰宅してすぐに使える様に玄関近くに設けることが条件になりつつあります。

以前の洗面スペースは、脱衣と洗濯と洗面の3つの機能をコンパクトに求めた「3イン1タイプ」の洗面脱衣室にありました。それが、脱衣室から洗面を切り離して脱衣兼洗濯室の「2イン1タイプ」となり、洗面コーナーを可能な限り玄関に近づけた計画をおこなうようになりました。それでも、平面の計画上やむを得ず離れてしまうのならば、玄関に洗面コーナーを別途追加することもいとわなくなりました。

それほどまでに、コロナやインフルエンザなどの菌を家に入れないことを大切に考えています。共働き・子育て世代は、家族の健康を今まで以上に気遣うようになりました。

在宅勤務から生まれた「ワークスペース」

二つ目は、在宅勤務が可能な「ワークスペース」の設置です。
わずか数時間でも家族から離れ、一人になって仕事をするスペースです。もちろん、贅沢は言わず床面積は、1~2帖でも良しとして始まりました。

今は、更に考え方が変化して、在宅勤務をするご主人や奥様だけではなく、空いているときは子ども達も使えるファミリースペースとして、あるいは、もっと合理的にマルチに家計簿や食事の献立を考える家事スペースや趣味のスペースとしても使えることを希望されることが多くなりました。

住まいは、家族が寝泊まりする一つの箱から、家族と共に暮らす生活に重きをおくように変化してきています。即ち、共働き・子育て世代は、住まいに家族にとって居心地の良さを追求しているのです。

日常の使い勝手を重視した『人気の間取り』

それでは、「+スペース」を設けた間取りが、最近人気がある理由をご説明します。
先ずは、No.4の平面図をご覧ください。

No.4図面

この間取りの特徴は、家のほぼ中心に独立した「洗面コーナー」が設けられていることです。

玄関近くに洗面があると、靴を脱いで室内に上がったら、直ぐに手洗い・うがいができます。菌を持ち込まない、身体を健康に保つためにも大切な行為です。

また、用を足した後の手洗いや、朝起きて階段を下りたら顔を洗え、お休みになる前には歯を磨いてから2階の寝室へ移動することができます。いずれも、洗面コーナーが生活動線のハブになっています。

更に、ランドリー近くに洗面器があると、汚れのひどい物の下洗いを洗面コーナーで行えてとても便利です。それが、キッチンとランドリーとの動線の途中にあります。住まいの中で、料理と洗濯という異なる家事をそれぞれの距離を短くスムーズに結ぶことで、同時に家事作業(ながら家事)をこなすことができます。
忙しい共働き・子育て世代には理想の間取りではないでしょうか。

このように、洗面コーナーが、玄関収納庫・ランドリー・階段・トイレ・キッチンにも近いことで、暮らしやすさが変わります。

次に、No.45の平面図をご覧ください。

No.45図面

この間取りも、玄関収納で靴を脱いだ後に手洗いができるようになっています。
階段近くの洗面コーナーとは別に設けているので少し贅沢に感じるかもしれません。

しかし、お出かけや帰宅時に必ず家族と顔を合わす機会をつくるリビング通過型の階段(リビング階段)が家族の絆を増すとあれば、こんな間取りもあるのではないでしょうか。

更に、この間取りには、「ワークスペース(ルーム)」があります。

リビングとは、間仕切壁で仕切られドアの開け閉めで出入りする計画です。音が漏れにくいので、作業に集中することも会社とのWeb会議にも使えます。ただし、間仕切りの一部には室内窓がはめ込まれていますので、LDKにいる家族の気配を感じながら過ごせるようになっています。

もちろん、間仕切壁を取りやめて、リビング一体型のワークスペースとして家族の誰でもがいつでも自由に使えるコーナーとして多用途に使うことも可能です。

これからは、冒頭に申しましたように、情報量の多い中では時代の流れが速くなり、その変化に伴って住まい手の価値観が変わり、新しいライフスタイルに合わせた提案が求められる様になります。

今回の「+スペース」である、健康管理を考えた「洗面コーナー」や在宅勤務から生まれた「ワークルーム」は、現在における住まい手への一つの解答です。これが、時代とともに価値観を残したまま姿を変え、更に発展していくものと考えています。

私たちは、常にアンテナを張って、住まい手の要望にお応えできるように様々な設備機器の使い勝手や動線の工夫を行い、間取りの提案をしていくべきです。

イマドキ家族の家づくり(まとめ)

本シリーズでは、現在の共働き世帯や子育て世代が求める住まい方を『イマドキ家族の家づくり』と称してご案内いさせていただきました。

彼らの家づくりには、日々忙しい彼らにとっての「過ごしやすさや暮らしやすさ」を求めた間取りの解答を出すことが大切です。特に、今回お話しさせていただいた「3つのポイント」は、重要と考えています。

最初に取り上げた、ゆとりある生活を過ごすための『収納』では、単なる収納力を重視するだけではなく、各スペースに求められる適当な収納があることで、「掃除」という家事が楽になることも想定して計画する必要があると申し上げました。

▼イマドキ家族の家づくり3つのポイント【収納編】の記事はこちら

次の、使い勝手にこだわった『水廻り』では、いつでも誰でも自由に使えて、「洗濯」という家事が楽になるように水廻りを集中させること。加えて、その場で室内干しをしたり、そのまま収納して置いたりできるようなスペースがあるプランが良いと申し上げました。

▼イマドキ家族の家づくり3つのポイント【水廻り編】の記事はこちら

この「収納と水廻り」の2つのテーマは、いつの時代でも注目され続けてきました。暮らしやすさは、ここから始まるといっても過言ではないとまで言われてきました。

もちろんそれは今も変わりはありません。

しかしながら、それらは、近年において物を片付けるとか、水廻りをまとめて使いやすくするという単純なことではないのです。掃除・洗濯・料理などの家事作業に結びつけたプランニングを行うことが新しい家づくりの始まりとなります。

そのうえで最後にお伝えした、時代の流れを把握した新しいライフスタイル『+スペース』を計画に取り入れることによって間取りは様変わりし、この共働き・子育て世代からの多くの支持を頂くこととなります。

最後に、皆さんに申し上げます。

難しい性能や仕様、あるいはデザイン性について語るよりも、暮らし方を基にしたプレゼンテーションの方が、『イマドキ家族』に響きます。

これからは、暮らしぶりを語れるプランニングをすることによってファンづくりをおこなってください。

松浦 喜則
一級建築士 / 遊建築設計社 代表松浦 喜則

平成4年、遊建築設計社を設立。「住まいの文化座」を主宰し住宅会社の設計や、 営業マンに提案ノウハウを伝授。合理的で、簡単なプラン提案の手法は好評。年間500棟のプランニング実績から生まれた、接客用ツールを開発。

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