2021年7月27日

照明計画、室内を明るく保つのは?【家づくりに潜むクレームとトラブル】

皆さん、こんにちは!遊建築設計社の松浦です。
今回は、家づくりを進める中で起こる「クレームとトラブル」についてお話しさせていただきます。

私たち遊建築設計社では、お施主さんとの間で問題にならないように、様々な事例を挙げて対処方法や根拠をまとめた「YU-GRAM」という家づくりのルールを定めています。そのルールを基に、ヒアリングをさせて頂き、プランニングに活かし、そしてプレゼンテーションを行っています。

これからお話しする内容は、ルールブックに記載されていることであり、私たち設計事務所が常に実践していることです。
家づくりをする方に必ず役に立つことですので、最後までお読みください。

▼プランづくりのルール「YU-GRAM」に関してご興味ございましたら、下記ホームページよりご確認頂けます。
https://lbyu-net.com/bunkaza/yu_gram/

照明計画、室内を明るく保つのは?

本日は、『日々を安全に暮らす、照明計画』について、お話ししたいと思います。

皆さん、夜に室内が明るいことにホッとしませんか!

何がどこにあるか直ぐにわかり、傍に誰が居て何をしているかを知ることができます。当然ながら、声だけではなくアイコンタクトでのコミュニケートも図れるのです。今や、夜でも明るいことは、私たちにとって当たり前の生活となっています。
仮に、電気が消えていて周りが見えなかったとすると、不安になり、孤独感を覚え寂しくなるものです。

例えば、家の電気が消えてしまったことを想像してみてください。

大変、家の明かりが点いていない!

今日は、久しぶりに家族と共に外で食事を取りました。

楽しい語らいは、家路についても尽きません。途中、雨が降ってきても途切れることなく続きます。しかし・・・、

家にたどり着いたその時、事件が起きました!
「パパ、お家が暗いね?」・・・その一言で、空気が一変しました。
家の明かりが点いていない?・・・不安が募ります。

外出時には、防犯のために必ず点けている「ポーチ灯」が消えているのです。よく見ると、リビングの常夜灯までも消えています。
振り返って、「ママ、家を出るときにポーチ灯を点けたよね?」
悪い事態を予期してか、緊張感が走ります。まさかドロボー?

とても冷静になれない、一体全体何が起きたのだろうか?思考不能に陥る・・・いつもと違って明かりが点いていないことが、人をこれほどまで不安に落とし込みます。

勇気、家の中の様子は・・・

電柱に取り付けられた街路灯の明かりや、行き交う車のヘッドライトが家の中を照らし出す。初めて外から見る我が家の様子です。目を凝らしてじっと見るが、中には誰もいないようです。誰か隠れていたとしたら・・・、

「パパ、中の様子を見てきて!」と、ママが私の背を押すのです。
仕方がない、先ずは勇気を振り絞って家の中へ、そ~ッと・・・、鼓動が聞こえる?
「パパ、早く入って、雨で濡れちゃう!」雨なんか気にせずに今までいたのに・・・
玄関のドアを開けて・・・、照明のスイッチを探すが、わからない?

そうだ、我が家は、人感センサーで玄関の照明が自動で点灯していたから、・・・焦りが増していきます。スイッチの位置が、わからない!

「パパ、僕知っているよ!」と息子が中に入って来ようとするのです。
「危ない、誰がいるかも知れないから外にいなさい!」と、身体でさえぎる。
手探りでスイッチの位置を確認して、カチ、カチ、「あれ、やっぱり点かない!」
しょうがない、もう少し進んでみよう・・・

緊張のまま中に入ると、玄関では靴に足を取られ、上がり框(あがりかまち)の段差につまづき、やっとの思いで靴のままホールに建つことが出来た。どうやら、人の気配はしないようだと安堵する。

・・・皆さん、これは危険なことです。すぐに家の中に入ってはいけません。そうです、絶対にドロボーさんと鉢合わせするような行為はやめてください!相手も恐怖を抱いていて、出会った瞬間にどんな行動に出るかわかりません。できれば、外にいて人を呼んでいただいた方が賢明です。

あるいは、建物周囲を回って、窓ガラスが割れていないか、窓が開いていないかなど家の中に侵入した形跡の有無を確認してから家に入ってください。

分電盤は、何処だっけ?

さて、我に返って電気をつけること(通電)に集中することとなった!
分電盤は、どこにあったかな?・・・普段使わないと、こんなことも忘れてしまいます。
「ママ、分電盤って何処だっけぇ?」

振り向いて声をかけると、半開きにした玄関ドアの外からママの声が返ってきた。
「洗面の手前のクローゼットの中にあったはず?・・・」
ようし、では携帯電話のライトをつけて・・・、ゆっくりと進む。

皆さん、ここでまた注意があります。

分電盤をクローゼットの中に設けてはいけません。分電盤は、水廻りを避け露出していていつでも操作確認ができる位置に設けてください。クローゼットの中に設けると、分電盤の前に物を置いたりする可能性があり、直ぐに点検ができなくなる場合があります。あまり見てくれの良いものではありませんので、気持ちはわかりますがクローゼットの中は避けてください。

パチン、パッ!ブレーカーを上げると明かりが点きました。
周りを見渡しても問題なさそう、人影もありません。どうやら、たこ足配線が問題のようでした。ママには責任がありません、差込口が足りなくて使ってしまったのでしょう。
コンセントの数が足りないのは問題だなぁ、設計ミスではないだろうか?

こんなことでも、クレームは発生してしまいます。コンセントは、多いともったいない、少ないと使いにくいものです。電気機器などの使い方を十分に打ち合わせた上で設計してください。

挿絵

なんと、教訓がイッパイ、いっぱい!

電気のある生活は当たり前、明かりが点いていることが普通の生活です。
しかしながら、今でも多くの失敗や反省が寄せられています。

本日は、それらを踏まえて、いくつかの提案があります。これからの家づくりの参考にしてみてください。

●玄関の照明スイッチは、玄関ドアの近くに設けること!

人感センサー付きの照明器具は便利でとても助かります。
しかし、万が一の時には、入ってすぐに確認できるところにスイッチがあった方が良いです。
例えば、電気が点いていなくてもスイッチが光る「ホタルスイッチ」ならば、真っ暗闇でもスイッチの位置が分かります。今回のように漏電した時の確認だけではなく、センサーが故障した時にもスイッチの位置が分かると助かります。

●照明器具のスイッチは、出入口の近くに設けること!

照明は、各部屋やスペースを使うときに点けるわけですから、そこへ出入りする時にスイッチがある方が良いです。
入る手前なのか、ドアを開けたらすぐ脇に設けるのか、使い方を考えて決めてください。

●バッテリー内蔵の照明器具を何台か設けること!

突然の停電時には、バッテリーが内蔵している非常用の照明器具があると良いです。
例えば、1階では、玄関ホールや廊下、分電盤の近く。2階では、階段ホールや廊下にあると万が一の時に助かります。
非常用照明の点灯は一時的ですが、明かりが消えて何も見えないことで起こるパニックにはなりにくいです。また、段差のある階段や玄関の上がり框(かまち)近くにあるとケガをしにくいかと思います。

●分電盤の設置位置に注意すること!

水廻りや収納の中を避け、普段は目につきにくく、万が一の時に点検しやすい場所が良いです。
もちろん、子ども達には操作しにくい高さに設けることをお勧めします。例えば、来客の目につきにくい家族専用に使う裏動線内や、家事コーナーはいかがでしょうか。

さらに、
●常に、部屋を片付けられるように収納スペースを充実させること!

照明計画には、直接的に関係ないことですが、大切なことなので付け加えさせて頂きます。

例えば、玄関には、家族分の靴が収納できる下足入れ。リビングには、新聞や雑誌、オモチャやゲーム用品を仕舞うリビング収納庫。キッチンには、食器や調理器具を収納するパントリー。更に、1・2階の廊下やホールには、掃除機や季節物の除湿器や扇風機などを仕舞う共用収納庫。など十分な収納スペースを確保して、いつでも部屋にモノが散乱しないように心がけておく必要があります。明かりが消えたとしても遮るモノがなければ、安全に移動することが出来ます。

クレームやトラブルは、当たり前が当たり前でなくなった時に始まります!
電気の設計(照明計画)は、デザインが良いお気に入りの照明器具を揃えることや、夜の部屋の雰囲気を醸し出すだけではありません。各スペースの使い方や暮らし方を考慮した上で、いつでも室内を明るく保ち、家族が心安らかに安全に生活を送れるように計画することも大切なことです。
即ち、住まい方を補助するのも照明計画の一つなのです。

住まいにおいては、事故を未然に防ぐことと同時に、突発的なアクシデントが発生しても対処できるように設計すること。そして、その計画の意図を必ず説明し、お施主さんが初期対応をできるようにしておくことも忘れないでください。いつでも当たり前に照明が点くとは限りません。そのことを重々と心掛けておくことがクレームやトラブルを防ぐ秘訣になります。

次回は、「車の扱いは大変、駐車スペースの計画」について詳しくご案内いたします。皆さん、ご期待ください!

YU_GRAM
松浦 喜則
一級建築士 / 遊建築設計社 代表松浦 喜則

平成4年、遊建築設計社を設立。「住まいの文化座」を主宰し住宅会社の設計や、 営業マンに提案ノウハウを伝授。合理的で、簡単なプラン提案の手法は好評。年間500棟のプランニング実績から生まれた、接客用ツールを開発。

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