2021年5月25日

注意!日当たりの確保【家づくりに潜むクレームとトラブル】

皆さん、こんにちは!遊建築設計社の松浦です。
本日から数回に分けて、家づくりを進める中で起こる「クレームとトラブル」についてお話しさせていただきます。

この問題は、お互いの勘違いや思い違いなどの説明不足で起こる場合と、家づくりの基本をしっかりと押さえていない場合に起こります。たとえ小さなことでも放置すると大きな問題に発展しかねません。

一度発生すると、お施主さんのために現在取り組んでいる全ての業務よりも優先して解決しなければならないのです。それも、納得がいくまで顧客対応を強いられてしまいます。これは、新規契約をとるとか、計画(デザイン)の検討を重ねるとかのように、楽しく前へ進める仕事ではありません。

いわゆる「後ろ向きの仕事」です。

私たち遊建築設計社では、お施主さんとの間で問題にならないように、様々な事例を挙げて対処方法や根拠をまとめた「YU-GRAM」という家づくりのルールを定めています。
そのルールを基に、ヒアリングをさせて頂き、プランニングに活かし、そしてプレゼンテーションを行っています。

これからシリーズとしてお話しする内容は、全てがそのルールブックに記載されていることであり、私たち設計事務所が常に実践していることです。その一つひとつが、家づくりをする方に必ず役に立つことと確信しています。

是非、シリーズの最後まで継続してお読みください。

第1回 日当たりの確保

本日の第1回目は、『日当たり』について、お話ししたいと思います。

皆さん、お日様のチカラはありがたいモノですね。周りを明るくしてくれるし、その上、温かい。私は、いつもそう思って過ごしています。日当たりがあることで庭の草木を育ち、住まいの中を居心地よくしてくれます。日が当たるとなんだか気分も違いますよね。

年寄りじみた言い方ですが、「文明の利器を使わなくても心地よい!」これは、とても大切なことではありませんか。

大変だ、家に日が当たらない!

ところが、建ててから分かったことですが、
「我が家には日が入らない!」なんてことが発覚することがあります。

何故だろう?と今頃考えてももう遅い。あの時、家を建てるときに住宅会社の方が、「庭先が4.0mあれば日が当たります」と言っていたのに…リビングには日が入ってこない!建ててしまってからでは建物を移動できない!…曳家(ひきや)という方法がありますよ、などとは言わないでください。行き場がなくてやるせない気持ちになります。

北入りの家だからかなぁ?

更に悔いることが…、やっぱり周りの土地に比べて販売価格が安いからと言って「道路が敷地の北側にある土地を買うべきではなかった!」と思っても仕方がない。

車を道路から直角に停めないで、平行に駐車場を設けていたら建物が北側に寄って庭先が取れたのになぁ… それもこれも、「後の祭り」ということでしょうか?

挿絵

住宅会社の方から、「夏には日が入ります」と言われても、真夏に日が入っても意味がない。むしろ暑い日差しを避けたいくらいなのだから…。
本当に「日当たり」に関しては、クレームをよくお聞きします。

ヒアリングの大切さ!

事の発端は、お施主さんへのヒアリング時にさかのぼります。建物への日当たりに関することは、家づくりのご希望をお聞き取りするときに確認しておくべきでした。

それも、日当たりの加減を論理的にです。

説明すべきことは、
第一に、日当たりは、敷地の大きさや形状、建物を建てる向き(方位)によって異なること。更には、法的な建物規制(北側斜線など)によっては、計画敷地の南側に背の高い建物が建ち、長い日陰をつくってしまい日当たりが悪くなる可能性があることをです。

そして第二に、日当たりは、南中時の太陽の高さによって決まることです。地球は、傾いて(地軸23.4度の傾き)自転しながら太陽の周りを公転しています。それによって、一年を通じて南中時の太陽高度(入射角度)が異なり、計画敷地の南にある建物の影の長さが変わるのです。

皆さん、「小学生の頃に習ったような気がする?」とは言わずに、断面図を用意しましたのでご覧になって記憶を蘇らせてください。

ヒアリングは、単なる聞き取りだけではなく、実はクレームを招かないようにするために案内するとても大切な打ち合わせでもあるのです。

隣地境界線からの建物の離れと隣棟間隔は?

それでは、日当たりについてまとめた断面図をご説明します。

挿絵

上の図は、「春分・秋分の日」の日当たりを図面にしたものです。
ただし、建物が建つ地域の緯度によって、入射角度が変わりますのでご注意ください。

この図は、北緯35°の場合の入射角度を計算したものです。如何でしょうか、南側の境界線から4.0m離すことで建物内部への日当たりが確保できるのが分かりましたでしょうか。住宅会社の方が、「庭先が4.0mあれば日が当たります」と言われたのは、このことだったのかも知れませんね。

挿絵

上の図は、「冬至の日」の日当たりを図面にしたものです。

冬至は、太陽の入射角度が一番低くなり影が長く伸びます。図のように南の建物から4.8m、または隣地境界線から3.8m以上建物を離すと1階に日が入ることが分かります。冬至でも日が入るように計画するのであればこの数字を説明して建物の離れを決めてください。

皆さん、数字はウソを言わないのでしっかりと覚えてお施主さんに説明してください。説明できることで、間違いなく好感を持たれると思います。

せめて、1階リビングには日が入るように!

日当たりを確保するということは、生活を営むに当り当然のことと解釈されています。

お施主さんの中には、日が入らなくて昼間なのに暗いとか寒いなどはもってのほか、設計が悪いと思われている方が多いです。

しかしながら、建物に日が「当たる・当たらない」は、計画する皆さんだけに責任があるわけではありません。間取りや規模によっては、どうにもならないことがあります。それでも、計画する私たちには説明責任があります。そのことをしっかりと肝に銘じておいてください。

私たち設計屋は、この「冬至の日」の日当たり、特に1階リビングの日当たり(日の入り方)を必ず説明します。その上で、お施主さんが納得される建物の平面形状や配置を導き出します。それが、クレームやトラブルを未然に防ぐ方法なのです。

皆さん、いかがでしたか。建物や庭への「日当たり」を確保することは、生活上とても重要です。是非、お互いに確認してください。

次回は、「たかがコンセント、されど住まい心地を左右するのは…」について詳しくご案内いたします。皆さん、ご期待ください!

松浦 喜則
一級建築士 / 遊建築設計社 代表松浦 喜則

平成4年、遊建築設計社を設立。「住まいの文化座」を主宰し住宅会社の設計や、 営業マンに提案ノウハウを伝授。合理的で、簡単なプラン提案の手法は好評。年間500棟のプランニング実績から生まれた、接客用ツールを開発。

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全国の住宅会社・工務店とともに設立した「デザイン住宅に特化した会」です。時代に合った生活提案力のある商品企画、社員力向上のためのデザイン研修、定期会合や文化交流会(建物見学会)などによる情報交換を行っています。

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