簡単に、外観デザインの整え方
皆さん、こんにちは!遊建築設計社の松浦です。
私は、設計事務所を開設して28年となりますが、そのほとんどが木造住宅の設計でした。その中で、建物の外観は、いつの時代も住まい手はもとより、つくり手の最大の興味と言っても過言ではありません。
総合住宅展示場のモデルハウス計画では、来場者は、外観のデザインを見て建物の中に入ってこられます。従って、私たちは、場内の移動ルートを推理し、来場者へ向けてインパクトを与える建物の姿を意識してデザインをまとめます。それほど、大手ハウスメーカーにとっても、住宅の外観デザインは大切なことです。
また、つくり手に役立つようにと、外観に関する販促ツールも制作し続けています。
人気のデザインを100種類にまとめた「外観デザイン集」や、外観と間取りをタイプごとに取りまとめた「ハウスデザイン集」です。
これらは、多くの方からの支持を受けてご提供させていただいています。
このシリーズでは、私たちが培ってきたそのノウハウを基に、様々な外観デザインのつくり方について一例を挙げながら一つひとつお話しいたします。
モダンデザイン・フラットルーフ(その1)
本日は、2階建てフラットルーフのモダンな外観デザイン(ハウスデザイン集09)について、その形が語ること、表現方法を中心にご案内いたします。
屋根が切り分けるスカイライン
皆さん、木造住宅における「モダン」とは何でしょうか?
私たち遊建築設計社では、「和風」でも「洋風」でもない、どちらにも属さないデザインを「モダン」と言っています。建築体系的には、こんな風にザックリと分類しないのですが、施主さんにも分かりやすく伝えるために3つに分けています。
では、なぜフラットルーフのこの外観デザインを「モダン」に組み入れているのか?
それは、フォルム(カタチ)そのものが、今までの木造建築でつくることをしなかった形状だからです。例えば、屋根です。木造ならば、雨仕舞を考えて軒を出し、屋根に水勾配(建物中心部から軒先へ向かって水を流す傾斜)を設けた切妻や寄棟屋根とすることが一般的でした。
ところが、防水性能が向上したことで雨仕舞の考え方が刷新され、木造建築にフラットな屋根が誕生しました(やや不安もありますが・・・)。それによって、建物が空を分けるスカイラインが変わりました。従来の斜めに切り裂くギザギザラインではなく、空を水平に切り分けるラインの登場です。
私たちは、今までにない「和」でも「洋」でもない形状から、新しい木造建築のカタチとして「モダン」に組み入れています。
「積み木」の組み合わせ、ブロックプラン
では、フラットルーフデザインのつくり方の一例をご案内します。
このパースの建物は、一言でいうなら「積み木」を組み合わせた建物です。
1階に大小異なる積み木を並べ、その上に更に大小異なる積み木をバランスよく載せてプロポーションを整えています。このモダンデザインは、積み木の家と言っても良いのかも知れません。
但し、間取り(住まい方)を後回しにして、外観を優先する訳にはいきません。
私は常に、間取りと外観は連動していなければならないと考えています。間取りと関係なくカタチをつくるということは、住まい方を無視して、力(チカラ)任せに彫刻作品として制作したことになります。住まう人がいて初めて家づくりと言えます。外観デザインにも、住まう人の暮らしが表れる様に計画するべきです。
その積み木の家づくりを可能にするのが、私たちが推奨する「ブロックプラン」です。
ブロックプランは、住まいの各スペースをグループ化してブロック(六面体)をつくり、組み合わせていくプランニング方法です。即ち、そのブロックこそが、「積み木」であり、間取りの一つのパーツなのです。
ブロックプランによるプランニング方法が、お施主さんが求める住まい方と、お好みのフラットルーフの外観を、合理的にカタチに現していきます。
いかがでしたでしょうか、「積み木の家」のつくり方をご理解頂けましたでしょうか?
次回は、そのカタチに、量感というインパクトを与える方法について詳しくご案内いたします。皆さん、次回もご期待ください!
- 一級建築士 / 遊建築設計社 代表松浦 喜則
平成4年、遊建築設計社を設立。「住まいの文化座」を主宰し住宅会社の設計や、 営業マンに提案ノウハウを伝授。合理的で、簡単なプラン提案の手法は好評。年間500棟のプランニング実績から生まれた、接客用ツールを開発。