気を付けたい、トイレの計画!「家づくりに潜むクレームとトラブル」
皆さん、こんにちは!
遊建築設計社の松浦です。
今日は、家づくりを進める中で起こる「クレームとトラブル」についてお話しさせていただきます。
私たち遊建築設計社では、お施主さんとの間で問題にならないように、様々な事例を挙げて対処方法や根拠をまとめた「YU-GRAM」という家づくりのルールを定めています。そのルールを基に、ヒアリングをさせて頂き、プランニングに活かし、そしてプレゼンテーションを行っています。
これからお話しする内容は、ルールブックに記載されていることであり、私たち設計事務所が常に実践していることです。
家づくりをする方に必ず役に立つことですので、最後までお読みください。
第7回 気を付けたい、トイレの計画!
住まいの中で、人が入る一番小さな部屋は、「トイレ」でしょうか。
トイレット(toilet)またはトイレットルームを略して「トイレ」、英語のお手洗いを兼ねたラバトリー(lavatory)、ウォーター・クローゼット(water closet)を略して「WC」。
日本語で言うと、排泄の用を足す「便所」や、「手洗い」のことですね。昔々は、「雪隠(せっちん)」や「手水(ちょうず)」に「はばかり」などと呼んでいた時もありました。昔の名称の多くに共通するのは、「直接的な表現を避ける」という日本人らしい言葉遣いが伺えます。また、静かな場所・人のいない場所という意味を持たせた「閑所」もトイレを指す言葉です。
本当に、いっぱい名称がありますね。
本日は、そんな「トイレ計画」で気になることを、事例に基づいてお話しさせて頂きます。これからのプランづくりに参考になるかと思いますので、最後までお読みください。
近すぎても、遠すぎても「NG」なのは?
お施主さんから、住宅会社の社長にお電話が・・・
その内容は、便器に座ったままでは、トイレットペーパーに手が届かない!毎日の事なので、使いやすいように便器の横に移して欲しい!
なぜなのだろう、便器に座った正面にペーパーホルダーが設置されている?(図1)
(図1)
これでは遠くて使いにくい。体の小さなお子さんは、絶対に手が届かない。
外部に接する壁(外壁)にビスを打ってしまったら、断熱性能が落ちてしまうと考えたのだろうか。いずれにしてもこちらの落ち度だから、早急に対応しなければならない。
移動した直後に、また、お施主さんからお電話を頂きました・・・
今度は、トイレットペーパーホルダーやタオル掛けが便器に近すぎる!
・・・便器に座るのに邪魔、立って用を足しにくい!
また、クレームです。
なぜこうなってしまうのだろうか?
我が社の社員は、当たり前のことが出来ない。やはり、自分で動くしかないのだろうか。忙しい社長業の合間では、対応が遅くなり、小さなクレームが大きなトラブルに発展しかねない。社員のスキルを挙げなければならないと感じたそうです。
スカートが、便器に付いたぁ!
奥様からの悩み相談です。
トイレの窓を開けようとすると、必ずスカートが便器に触れてしまう!
・・・なぜ、そこに窓があるのだろうか?(図2-c)
(図2)
トイレには、「明り取り用や換気のための窓が必要です」と担当された設計の方から説明がありましたので、ご案内のまま「窓」を設けて頂きました。でも、我が家のトイレの窓は、入り口を入り便器のその先にあります。主人も、息子たちも立って用を足すので、私は気になって仕方がありません。
・・・他の家はどうなっているのだろうか?
設計の方にお聞きしたら、「いつもその位置に窓を設けています」と詳しく説明することもなく簡単に返されてしまいました。引き渡してしまったら、もうやり直しができないことは分かりますが・・・建てる前と後では、対応が違いすぎるなぁ、と感じました。
本当に、窓の位置はそこしかないのでしょうか?
今思うと、出入口近くに窓を設けた方が良かったです。(図2-a)
そこにあったならば、いつでも窓を開け閉めできますし、窓のお掃除も楽にできます。家づくりは、日々暮すということをよく考えた上での工夫があってしかるべきではないでしょうか。
奥様のお気持ちは良く分かります。
些細なことですが、建ててから分かることっていっぱいありますよね。このことは、これから建てる方のプランに活かして頂き、是非お施主さんにご説明して欲しいと思いました。
階段下のトイレって・・・・・?
私たち設計屋は、建物の延べ面積を少しでも小さく、そして動線計画を含めた間取りの効率を考えて階段の下にトイレを設けることがあります。このプランは、人によっては嫌がれることがありますので、十分な説明が必要と考えています。
天井が、低すぎない?
特に重要な説明は、天井高さやその形状です。
建物を引き渡してから、・・・天井が低い、これでは頭が当たる!
説明を省くと、こんなクレームが発生しかねません。
誰しも頭の中では、天井が低くなるだろうと想像されるかと思います。しかし、それがどの程度の高さなのか、単純に階段の踏面や蹴上の形状が天井に現れるのか、斜め天井なのか?お施主さんには分かりかねます。
(図3)
私たちは、必ず設計の段階で断面図(図3)にてご説明をし、壁に天井ラインを描いて天井の位置が分かるように体験していただいております。人には、背が高い低い、あるいは痩せている、やや太り気味など体形も様々です。
または、広い狭いと感じる感覚も個々に異なります。立って、あるいは座って用を足すにしても機能的な問題がないことをお互いに確認すべきです。
じ、地震だぁ‼
皆さん、笑い話があります
私友達の家に遊びに伺ったときです。トイレをお借りしていたら突然に・・・、
ドンドン、ガタガタ、音と揺れが始まったとのこと。
こ、これは、・・・じ、地震だぁ!直下型の地震が起きたのでは??
真っ青になって飛び出そうと・・・しかし、チャックが開いたまま(汗💦)
わあーっとドアを開けて外に出たら・・・、
お友達の息子さんが、「おじさん、どうしたの?」と不思議な顔をして立っていたというのです。
感の良い皆さんは、これだけでお分かりですね。
そうなんです、息子さんが、いつもの様に勢いよく階段を下りてきた振動だったのです。
階段下のトイレは、天井が低くなることだけではなく生活音がトイレ内に響き、時には激しい振動を感じることがあります。それも、楽しい我が家の一つとは言っていられません。階段下トイレだから当たり前のこととしないで、お施主さんには事前の説明をしておくことが賢明かと思います。
皆さん、本日は、トイレットペーパーの取り付け位置やトイレの窓位置、階段下トイレの問題点や確認点をお話しさせて頂きました。
しかしながら、家づくりには、トイレのことだけではなく、笑い話では済まされぬクレームやトラブルに発展しかねないことが多々あります。
対策としては、社内で「家づくりの標準化」を図り、それを社員全員が熟知し、計画時や工事中においても絶えず確認して現場に活かさなければならなりません。
私たちは、今の住宅会社に必要なのが「プランニングルール」を定めること!と確信しております。皆さん、明日のために急ぎ始めてみませんか。
次回は、生活スタイルが変わり和室の位置づけも変わってきました。
そこで、「イマドキの和室の在り方!」と題して、和室の役割りとその使い方について詳しくご案内いたします。
皆さん、次回もご期待ください!
- 一級建築士 / 遊建築設計社 代表松浦 喜則
平成4年、遊建築設計社を設立。「住まいの文化座」を主宰し住宅会社の設計や、 営業マンに提案ノウハウを伝授。合理的で、簡単なプラン提案の手法は好評。年間500棟のプランニング実績から生まれた、接客用ツールを開発。