玄関ポーチも危険がイッパイ「家づくりに潜むクレームとトラブル」
皆さん、こんにちは!遊建築設計社の松浦です。
今日は、家づくりを進める中で起こる「クレームとトラブル」についてお話しさせていただきます。
私たち遊建築設計社では、お施主さんとの間で問題にならないように、様々な事例を挙げて対処方法や根拠をまとめた「YU-GRAM」という家づくりのルールを定めています。そのルールを基に、ヒアリングをさせて頂き、プランニングに活かし、そしてプレゼンテーションを行っています。
これからお話しする内容は、ルールブックに記載されていることであり、私たち設計事務所が常に実践していることです。
家づくりをする方に必ず役に立つことですので、最後までお読みください。
第5回 玄関ポーチも、危険がイッパイ!
まず初めに、皆さんへご質問です。
「玄関ポーチ」の「ポーチ(porch)」とは、具体的にどの部分を指しているのでしょうか?
それは、玄関前の屋根が付いたスペースのことです。
・・・え、必ず屋根付きなの?
そうなんです、実は、日本では屋根のある「車寄せ」のことをポーチと言っていました。
・・・それじゃ、庶民の家には、なかったのでしょうか?
元を正せば、そうなのですが・・・。門、入り口あるいは、通路の意味でも使われていたようですからご安心ください。現在では、玄関に至る手前の屋外通路部分をポーチと呼んでいます。
今日は、この「ポーチ」に潜んでいる危険についてお話しさせて頂きます。クレームにもなりますので、最後までお読みください。
地盤面との間に、必ずある段差!
日本の木造住宅は、一般的に床仕上げの下地を木材でつくることが多いです。
木材は、水に浸かると腐ってしまいます。そういった防水や湿気の関係から、1階床の高さを建物が建つ地面(建築用語では地盤面という)よりも60㎝くらい高くすることが多いです。そのため、1階床との中間にあるポーチを、図1のように地盤面より少し上げて上り下りをしやすくします。
<図1>
お施主さんから、「なぜ、段差があるのですか?」と聞かれることもありますので、答えに困らないように覚えておいてください。
ポーチと地盤面との段差は30~40cmくらいですが、この高さが、意外と危険なのです。仮に、この高さから足を踏み外して、体重の乗った片足を一気に地面に突いたことを想像してみてください。
足首を捻挫するかもしれません。お年寄りなら、身体を支えきれず腰を地面に打ち付けて歩けなくなるかもしれません。30~40cmは、わずかに思う段差ですが、危ないと思いませんか。もちろん、「医療費を補償してください!」とクレームになる可能性もあります。
広さが足りない、「あ、危ない!」
こんなことをお聞きしたことがあります。
ここで、ハッとするような危険なことが生じたというのです!
ポーチでインターホンのボタンを押して待っているときのことだそうです。いきなり玄関ドアが開き、ビックリして半歩下がると、もうそれ以上ポーチがなく、思わず玄関ドアのノブにつかまって難を逃れたというのです・・・いやぁ、それはヒヤッとしますね!
お、落ちるところでした、あぶない危ない!
皆さんも、1度や2度こんな経験をされたことがあるのではないでしょうか。
では、なぜこのようなことが起きたのでしょうか?
それは、勢いよく玄関ドアを開けられたことではなく、ドアが開いてもポーチに立っていられるだけのスペースが足りなかったからです。
図2をご覧ください。
<図2>
私たちのルールブックには、「ポーチの広さの考え方」が記載されています。これを参考に危険を解消できる十分なスペースを確保してください。
階段が危険、「足が、靴が乗らない!」
ポーチには、段差を解消してスムーズに移動できるために、2段程度の階段が設けられます。ここでも、危ない目に合ったとのことです!
あ、危ない!靴が・・・、
当たり前ですが、足よりも履いている靴の方が大きい。上がれると思い普段通りに足を挙げたら、靴のつま先が「段鼻(だんばな)※段差の先端」に引っかかってしまい前へ倒れてしまった。・・・て、手が痛い!
下りるときに階段の踏面(ふみづら)に靴が乗りにくい。かかとの高い靴を履いた方から、・・・この階段は、こ、怖くて横向きでないと下りれない!
そうそう、あるある!などと呑気なことを言わずに、家づくりをする者として真剣に考えなければならないことです。この問題は、足を挙げる高さ(蹴上)が高すぎたり、階段に足を乗せる奥行(踏面)が不足したりするときに起きることです。
<図3>
私たちのルールブックでは、危険を排除するために、図3のように寸法が決められています。踏面(ふみづら)300mm(30㎝)、蹴上(けあげ)150~200㎜(20㎝)というこの寸法は、室内よりも踏面においては広く、蹴上については低く抑えられています。
その理由は、靴を履いて移動するからに他なりません。上がるときは、靴先が段鼻に引っかからないように。下りるときは、靴が乗りやすいように決めた寸法です。
皆さんも、少しゆとりを持って階段の寸法を決めてください。
急なスロープ、「登れない、止まらない!」
更に、こんな相談もありました。
家を建てるときに、移動のしやすさや、万が一車いす生活となった時を考えて、階段に変わるスロープを計画していただきましたとのことです。
ところが、そのスロープにクレームです!
あまりにも急勾配だ!というのです。
確かに階段ではないので、つま先が段鼻に引っかかることはありませんが、雨の日は滑りそうでとても怖い。もし、車椅子で上り下りするとしたら、自分で登れるだろうか、押してもらうとしても押し切れるだろうか?下りるときには、止まらず一気に下ってしまうのでは?・・・と、とても不安です!
「これは、クレームを言ってつくり直して頂けるだろうか?」というご相談です。皆さんは、このようなことがないように、スロープの勾配と長さの図4と表を参考にお決めください。
<図4>
おまけに、水溜りだぁ‼
その上、雨上がりに発見したというのです。工事会社が、スロープを下りた所に水を集めて流す桝(集水桝)を設けたらしいのですが、ここの水はけが悪く、水溜りができるのだそうです。雨が降っているときは、止むを得ないのですが、雨が上がってもしばらく水溜りが出来ているとのことです。
本人曰く、「集水桝は、見映えするものではないのにアプローチに設けますか?」
更に、「工事のやり直しを要求しても良いのでしょうか?」と言われました。・・・カンカンです!・・・もちろん可能ですので、両者間で穏やかに話し合ってくださいと。
玄関ポーチは、機能性も大切です!
玄関ポーチやその周囲のデザインで住宅の印象が大きく変わるからと言って、コダワリのあまり機能性を見落としてはなりません。特に、人や物の出入りを安全に且つ、スムーズに計画しなければならないと考えています。
安全性に加えて、宅配のやり取り、荷物やベビーカーなどが置きやすいこと。
外出時には、余裕を持って傘が差せ、帰宅時には雨に濡れずに傘をたためることなどにも目を向けてみてください。
きっと、住みやすい家ができます。
次回は、「大変、お隣さんからクレームが!」と題して、周辺環境を考えた家づくりについて詳しくご案内いたします。皆さん、ご期待ください!
- 一級建築士 / 遊建築設計社 代表松浦 喜則
平成4年、遊建築設計社を設立。「住まいの文化座」を主宰し住宅会社の設計や、 営業マンに提案ノウハウを伝授。合理的で、簡単なプラン提案の手法は好評。年間500棟のプランニング実績から生まれた、接客用ツールを開発。