「プランニング初級者」に対する人材育成のポイントとは?
みなさんこんにちは。
住宅設計Labo「遊ベーシックデザインの会」にて、
企画・運営を担当しております布施(ふせ)です。
日頃より、全国の住宅会社のみなさま向けに「住宅設計」に関するサービス・ツールの提供をさせて頂いておりますが、最近特にご相談を頂くことが多くなってきている話題について、考えてみたいと思います。
近頃私たちにご相談が増えていること。
それは、『設計業務に携わる人材育成』についてです。
現在は毎週のように住宅会社の経営者や、マネージャーの方と『人材育成』についてお話しする機会が増えてきております。本記事では、ご相談頂くことが多い課題の内容、そしてそれを解決するための考え方をまとめております。
社員教育を計画される人事の方・教育担当のみなさまなどにお読み頂ければ幸いです。
住宅業界における人材育成:相談内容ベスト3
では、設計業務に関わる人材に関する「悩み」の内容は具体的に
どのような声が多いのでしょうか?
直近の2~3年で寄せられる課題としては、下記の3つではないかと思っております。
【第1位】
プランがつくれない。(プランが決まらない)
【第2位】
スタッフの知識に差がある。
【第3位】
間取りのトレンドに追いつけない。
設計業務に関する「課題・悩み」は多岐に渡りますが、大きく区分すれば
この3つに当てはまる部分も多いのではないでしょうか。
当然ながら、このような課題を解決するための社員教育やスキルアップは必須です。同時に育成を進めていくことは大変難しいと思います。
そもそも、人材育成を行う個々の社員によってレベル差が存在したり、はたまた中途社員などの場合は、前職の会社とのプランニングの考え方や建物の仕様が違ったりなど、スキルアップを難しくする要因を挙げればきりがありません。
ただし「プランをつくる」という目的に絞った場合、“効果的な人材育成”に必要なことはすごくシンプルだと考えています。そのポイントとは『手順と根拠』です。
特に今の若手社員の世代、いわゆる「ミレニアル世代」や「Z世代」においては、このポイントを意識しながら人材育成を計画していくことが成果に繋がると考えています。
最短で「脱初級者」を目指す設計研修のポイント
私たちが「設計研修」を行う際には、先ほどの『手順と根拠』を理解して頂くことを大切にしています。
例えば、ご相談が最も多い“プランがつくれない”といった課題を解決するための社員教育を行う際、みなさまはどのような研修を行いますか?
「実際の事例・条件を基にプランニングを演習させてみる」
「先輩社員がプランをつくる現場に同席させる」など、様々な方法があるかと思います。
おそらく多くの方が実際にプランニングをさせてみるといった育成のアプローチをされるのではないでしょうか。
確かに、10年前までは私たちも「プランニングを模擬体験」させるような研修会を開催しておりました。しかし、これは10年前の住宅業界における人材育成の考え方ではないかと最近は感じています。
以前の「人材育成」では、“設計の経験がある方”がスキルアップのために研修に参加されるケースがほとんどでしたが、弊社が開催する最近の研修会では7割から8割の受講者が『設計未経験の方』となってきています。
これは、住宅会社や工務店の多くが“多様な人材の採用・活用”を積極的に行っており、『業界未経験・設計未経験』の方にどうやって活躍の場を与えていけるのかにチャレンジが必要な時代の流れを表していると考えています。
設計未経験の方が「プランをつくれない」のは当たり前です。
そういった人材に対し、いきなり「間取りづくりの演習」を行っても知識の定着は難しいと感じています。
そこで私たちは間取りづくりの「手順」を明確にし、プランづくりに必要なステップを区分することで、“プランニングに必要な要素(条件)”を段階的に理解してもらうことを重要視しています。
実際に私たちの設計研修会は、全6回のうち前半の3回は「プランづくり」を行うのではなく、「プランニングの手順」を学んで頂くカリキュラムにて行っています。
手順を繰り返し学んで頂く中で、プランニングを行う際には「建物規模」「配棟計画」「ゾーニング」といった条件を把握することの重要性を実感し、気づいてもらうための教え方や研修の場が大切だと感じています。
研修のプログラム等はこちら
また、今の若い世代の方に研修を行う際は“納得感”を与えることも意識しながら研修会を実施しています。
プランニングを行うには幅広い知識が必要となりますが、いきなり実践的なプランニングを教えても、基礎や理由など「分からないこと」がそのままになってしまい“納得感”が生まれないため、いざ実務で間取りをつくる際に応用が効きません。
むしろ初級者を育てる研修会では、「基礎的な知識」をきちんと教えることに注力した方が効果的です。
たとえば、1階・2階の平面図全体のつくり方を教えるよりは、リビングや主寝室などプランを構成する個別のスペースの広さや必要な機能を教えていくべきだと考えています。
その際にポイントとなるのが、単純に必要な帖数を覚えて頂くだけではなく、「なぜこの広さが必要なのか」といった根拠・理由を学んで頂くことです。
『未経験の方』に、理由や根拠を理解して頂くためには、専門用語ではなく誰もが分かる言葉で伝える必要があります。そのためには、体系的に整理されたプログラムで学んでいただくことで、知識の定着率が高まり短期間でスキルアップを実感できることとなります。
これから住宅業界では、多様な人材を活用しながら家づくりを行っていく必要性がますます高まっていく傾向にあります。
そういった人材を育て、即戦力として活躍して頂くためにも、社員教育をマネジメントされる皆様は「手順・根拠」を示すことをポイントに研修会を計画されることをおススメ致します。
ぜひ、受講するみなさんが“納得感”を持ちながらスキルアップできる人材育成を実行していきましょう!
- 有限会社 遊建築設計社布施 暁洋
遊ベーシックデザインの会・運営事務局長。長野県生まれ・東京都在住。遊建築設計社が運営する“住宅設計Labo:遊ベーシックデザインの会”にて、各種セミナーや研修会・イベントの企画・運営を行う。また、全国の住宅会社と共に、“住まい手目線”を第一に「これからの暮らし方」を考え、様々な家づくり提案ツールの企画・開発など積極的に活動を行う。