2022年4月5日

危ない!住まいの階段(その3)「家づくりに潜むクレームとトラブル」

皆さん、こんにちは!
遊建築設計社の松浦です。

今日は、家づくりを進める中で起こる「クレームとトラブル」についてお話しさせていただきます。

私たち遊建築設計社では、お施主さんとの間で問題にならないように、様々な事例を挙げて対処方法や根拠をまとめた「YU-GRAM」という家づくりのルールを定めています。
そのルールを基に、ヒアリングをさせて頂き、プランニングに活かし、そしてプレゼンテーションを行っています。

これからお話しする内容は、ルールブックに記載されていることであり、私たち設計事務所が常に実践していることです。
家づくりをする方に必ず役に立つことですので、最後までお読みください。

第11回 危ない、住まいの階段 その3

本日も、前回に引き続いて「住まいの階段」です。
前回までは、危険な階段の型式(タイプ)や、足を滑らしかねない段板の三つ割り形状についてお話しさせて頂きました。

本日は、安全に上り下りができる「蹴上と踏面の大きさ(寸法)」について詳しくお話しさせていただきます。

私たちは、常に安全性について注意を払わなければなりません。
それは、建物の構造などの性能もさることながら、間取りの中に潜む危険な場所にも目を向けて設計する必要があります。

その第一が階段です。ご存じのように、階段の上り下りによって転倒が起きた場合には、大きなケガを負いやすい場所となります。

おっと、危ない!・・・この階段、何か変では?

皆さん、こんなご経験がありませんか?

新しい家に引っ越しされて、以前に住んでいた家の感覚で階段を上り下りしたら、足が滑りそうになって、「ヒヤッ・・・、」としたことがありませんか。
あるいは、お友達のお家に訪問した時に、自宅の感覚で上り下りした時にも、危ないと感じて思わず手摺りに掴まったことがあるのではないでしょうか。

それは、階段の型式(形状)だけではなく、蹴上と踏面寸法の違いから起こることが少なからずあります。

階段の蹴上(けあげ)とは、階段の1段の高さ寸法のことです。そして、踏面(ふみづら)とは、足で踏む板(段板)の奥行寸法のことです(図1)。

(図1)

階段の間取り

この寸法は、木造住宅の工法や、階高(1層分の高さ)、階段平面の形状によって異なります。また、住宅会社の施工方法などにより各々決められており統一されていません。したがって、今まで、あるいは普段使っている階段と同一の蹴上と踏面寸法でないことで危険を感じてしまうことがあります。

人は、寸法のわずかな違いでも、上り下りする時の足の上げ下げの感覚やリズムがくるってしまいます。

行きはよいよい、帰りは恐い!

また、こんなご経験もありませんか?

ハシゴを架けたような急勾配の直階段を上り下りした時のことです。
上りは、前を見ながら意外と簡単に行けるのですが、下りるときは、段板が見えにくく下まで視線が通ってしまいその高さに恐怖を抱いてしまうものです。

まるで、「通りゃんせ」の歌詞のように、「行きはよいよい、帰りは恐い!」となってしまいます。昔の古いお家には、この様な階段があり、子どもの頃に後ろ向きで下りた記憶があります。

その原因は、階段の勾配にあります。

当たり前ですが、蹴上が大きくて踏面が小さいと、階段は急勾配になります。
恐怖を感じない階段の勾配となる蹴上と踏面の寸法は、どれくらいでしょうか?

木造住宅の蹴上と踏面寸法は・・・?

建築基準法では、住宅の階段は、「蹴上:230mm以下、踏面:150mm以上」となっています(施行令第23条)。しかし、この数字は、最高高さで最低幅の寸法です。

もし仮に、この寸法で階段をつくったならば、前述のような急勾配の階段となってしまいます。皆さんの会社では、もっと緩やかな階段勾配となっていませんか。

では、どのように木造住宅の「蹴上と踏面の寸法」を決めているのでしょうか?

先ず、階高を階段の段数で割って蹴上寸法を決めます。そののちに、求めた段数分を平面に割り付けながら踏面の寸法を決めます。

例えば、蹴上寸法は、階高が2,900mmの場合に、階段の段数が14段の割り付けならば「2,900mm÷14=207.1mm」となり、15段割りならば「2,900mm÷15=193.3mm」となります。また、踏面寸法は、一般的に910mmを4つ割りすることが多いので「910mm÷4=227.5mm」となります。

この寸法は、木造の構造フレームから求めたものですが、実は理想的な「蹴上と踏面の寸法」なのです。

理想的な、蹴上と踏面寸法は?

私たちが参考にする建築計画本の中には、上り下りしやすい階段寸法の計算式があります。

それは、「蹴上×2+踏面」です。

この計算式は、標準的な日本人の歩幅(610~650mm)から考えて割り出したものです。歩幅より短いと上るときに足がつまずきやすく、長いと下りるときに大きく踏み出して足を滑らせてしまいやすいということになります。

先ほどの寸法をこの計算式に当てはめてみますと、
14段階段の場合は、「207.1mm(蹴上)×2+227.5mm(踏面)=641.7mm」、
15段階段の場合は、「193.3mm(蹴上)×2+227.5mm(踏面)=614.1mm」となり、日本人の歩幅である610~650mmの範囲内になりますので理想的な寸法と言えます。

皆さんも是非、実際に様々な蹴上と踏面寸法の階段をつくってみて、安全かどうか実感していただくことをお勧めいたします。

本日の「蹴上と踏面の寸法」は、お施主さんからの計画条件によって決まるのではなく、計画する私たちが決めることが多いです。

竣工してお引き渡しする時に、「危険な階段なので、ご注意して上り下りしてください」とは言えません。私は、お施主さんが万が一滑り落ちた時は、つくり手側にも責任があると考えています。

階段の上り下りは、加齢に伴う身体機能の低下によって、更に危険を増すことになります。階段計画では、「安全に上り下りができる蹴上と踏面の大きさ(寸法)」の基準を社内で決めておくことが重要です。先ずは、家づくりのルールをつくってください。

次回は、最近要望が多くなっている「住まいに取り入れたい3つのポイント」についてお話しいたします。これからの家づくりには必須となりますので、お楽しみにお待ちください。

YU_GRAM
松浦 喜則
一級建築士 / 遊建築設計社 代表松浦 喜則

平成4年、遊建築設計社を設立。「住まいの文化座」を主宰し住宅会社の設計や、 営業マンに提案ノウハウを伝授。合理的で、簡単なプラン提案の手法は好評。年間500棟のプランニング実績から生まれた、接客用ツールを開発。

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