トレンド:設計事務所の設計担当者に聞いてみた④
皆さんこんにちは!遊建築設計社の小川です。
今回も、『設計事務所の設計担当者に聞いてみた』と題し、設計事務所の設計担当者が設計業務を行う中で何を考えているのか、設計以外の目線から紐解いていきたいと思います。
第4回目となる今回ですが、前回に引き続き“トレンド”について聞いていきます。
後編も、ぜひ最後までお読みください!
※前回の記事はコチラからご覧いただけます。ぜひ今回の記事の前にご一読ください。
様々な業界の「トレンド」を見てみると…??
アパレル業界では、テレビや雑誌といったメディアからの情報発信、ブランドやデザイナーのコレクションからトレンドが決まっていきます。モデルやYouTuberなどのインフルエンサーが取り上げることでトレンドとなることも最近では増えてきましたね。一方で、口コミサイトやSNSへの投稿から消費者の中で話題となり、大きく広がっていく中でトレンドとなることもあります。
TwitterなどのSNSでは、リアルタイムで投稿が集計され、数多くの投稿に含まれる言葉やワードが“トレンド”として反映されます。「世間では何が起こっているのか」「今、何が話題になっているのか」を知るための情報収集の役割としてトレンドをチェックする方も少なくないはず、私もその内の一人です。
前回の記事をお読みくださった皆さんは、ここまで読んでどのように感じましたでしょうか。
(前回の記事はコチラから)
世の中に影響を及ぼすような、社会の動きとしての中長期的な「トレンド」と比べて、ファッションやSNSにおけるトレンドは流行やブームに近い意味で使われているように感じませんか?リアルタイムに近い「イマ」にフォーカスした短期的な「トレンド」と言えるでしょう。
少しの変化が大きな差別化に
住宅業界においても、先述したリアルタイムに近い短期的な「トレンド」は存在しているように思います。仕事場や学校に行かず、自宅で作業をするためのスペースなどは、数年前に今ほど話題になっていたでしょうか?たった一年でトレンドのスペースや暮らし方は変わっていくのです。
では、住宅業界における短期的な「トレンド」を設計事務所の設計担当者はどのようにおさえ、取り入れているのでしょうか。弊社チーフデザイナーの畑本に聞いてみたいと思います。
小川「トレンドを意識して間取りや提案に取り入れていくことは難しいように感じます。」
畑本「実は、トレンドを取り入れるということは、全く新しい何かを間取りに取り入れていくというわけではないんですよ。今まであったものを時代に合わせて少しずつ変えていくんです。」
小川「ベースや役割は変わらずとも、名前や使い方が変化しているんですか?」
畑本「例えば、最近は宅配サービスが普及しましたね。それに伴って、以前は靴や傘などを収納しておく場所だった玄関収納庫に、段ボールなどの荷物をストックするスペースが欲しいと希望するお客様が増えています。その他にも、現代に多い共働きのお客様であれば、フリースペースを室内干しのスペースとして使うプランも人気です。」
畑本「でもそれって、全く新しいスペースを創出したわけではないですよね。暮らし方や生活スタイルの変化に伴って要望も変化するし、それも住まう人が変われば、取り入れ方も変わってくる。その変化に対して柔軟に対応していかなければいけません。」
トレンド=暮らし方の変化
ここまで設計担当者にインタビューしてみて、住宅業界においては「トレンド」という言葉を、「流行」という意味で捉えておらず、間取りづくりにおいては「トレンド=暮らし方の変化」として捉えているように感じます。
では、設計事務所のスタッフが“暮らし方や生活スタイルの変化”についてどう把握し、日々どんなことを意識しているのかについても聞いてみました。
小川「トレンドをおさえ、取り入れていくため、他業界にも意識を向けることも必要だと感じました。」
畑本「そうですね。ライフスタイル雑誌の表紙のキャッチコピーや、書店の店頭に並んでいる人気雑誌の特集等を参考に、アンテナを張っておくことも重要なコトかもしれませんね。」
小川「特に意識して注視している業界やモノなどはありますか?」
畑本「例えば、家電業界とか。新商品のCMを見て、その商品を使った暮らし方の想像をしてみたり、世間でどういう評価を得ているのかを考えてみたりしています。意外なところにヒントがあるものですよ。」
インタビューを通して、曖昧で分かりにくかった「トレンド」をどのように解釈すれば良いのかが見えてきた気がします。短期的な「トレンド」を「暮らし方の変化」として捉え、これから住まう人が『今、どのような暮らし方を望んでいるのか』を考えること。これが住宅業界における、短期的なトレンドの考え方・ポイントではないでしょうか。
短期的な「トレンド」をおさえるために、エンタメ・自動車・家電といった業界の流行や新商品などを知っておくことで、日々の業務に活きてくる情報や小話を仕入れることが出来そうです。5GやEV自動車、IoT家電など、発展した技術によって新たな暮らし方や生活スタイルが生まれる予感がします。
「暮らし方や生活スタイルの変化」を生み出す要素は、住宅業界だけに存在するとは限りません。アンテナを張ることで、他業界が及ぼす変化についても柔軟に対応が可能となるはずです。その結果、トレンドを反映した間取りの提案に繋がるように感じました。
2回にわたり「トレンド」をテーマに設計担当者にインタビューを行いましたが、いかがでしたか?「トレンド」について、皆さんが考えるキッカケになればと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました!
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- 有限会社 遊建築設計社小川 敦進(おがわ たいしん)
2020年4月:遊建築設計社に入社。商品企画やSNSを活用した広報を担当。
“暮らしに関わること”を仕事にしていきたいと、「衣・食・住」を中心に就職活動。業界未経験ながらも、“住まい”が日常生活に与える影響力にやりがいを感じ、設計事務所で活躍中。