2021年6月18日

住まい心地とコンセント計画【家づくりに潜むクレームとトラブル】

皆さん、こんにちは!遊建築設計社の松浦です。
今回は、家づくりを進める中で起こる「クレームとトラブル」についてお話しさせていただきます。

私たち遊建築設計社では、お施主さんとの間で問題にならないように、様々な事例を挙げて対処方法や根拠をまとめた「YU-GRAM」という家づくりのルールを定めています。そのルールを基に、ヒアリングをさせて頂き、プランニングに活かし、そしてプレゼンテーションを行っています。

これからお話しする内容は、ルールブックに記載されていることであり、私たち設計事務所が常に実践していることです。
家づくりをする方に必ず役に立つことですので、最後までお読みください。

▼プランづくりのルール「YU-GRAM」に関してご興味ございましたら、下記ホームページよりご確認頂けます。
https://lbyu-net.com/bunkaza/yu_gram/

住まい心地とコンセント計画

本日は、『たかがコンセント、されど住まい心地を左右するのは…』について、お話ししたいと思います。

皆さん、当たり前のように電気の力を借りて生活していますよね。スイッチを入れれば明かりがともり、家電製品が動いて作業を助けてくれます。テレビや電話、インターネットという様々な情報システムも、電気信号で伝わってきます。

今や、日々の暮らしの中ではなくてはならない便利なモノとなっており、空気のように無ければ生きていけないくらいのモノとして存在しています。本当に、「電気というのは、ありがたい!」というと年寄りじみていますか。

しかし、電気の使い方を一歩間違うと、生活に支障が出たり、居心地を悪くしたりするのも電気のある生活です。特に、コンセント計画がそれらを左右すると言っても過言ではありません。

タリナイ、本当に足りないコンセント!

建ててから気が付いたことがあります。

「なんで、コンセントの数が少ないのだ!」

我が家の家づくりを担当した設計の方が、「まぁ、だいたい各室このくらいあれば足ります」と言われたから信用していたのに…、しょうがないと、妻がたこ足配線をしたいと言い始めた、「3つ口のコンセントを買ってきて!」…??

ご存知でしたか、たこ足配線?

コンセントをタコの身体のように、ひとつの差し込み口に複数の差し込み口があるコンセント配線を足に見立ててつくられた俗語ですね。専門家は一様に、「これは困ります、危険です!」と言い続けています。使用すると、一つのコンセント(回路)では電力が賄えなくなり、分電盤のブレーカーが落ちてしまう(電力の遮断)。場合によっては、火災になりかねません。

現実には、様々なタイプのたこ足コンセントが売られていることを思うと、コンセントの差し込み口数が不足しているのは間違いのないことなのでしょう。

オッと、危ない!・・・な、なんでこんな所に!

更に危険なことが…
子ども室に入ったら電源コードに足を取られてしまった!

足元を見ると、出入口の下を這うようにコンセントの延長コード(テーブルタップ)がありました。感電したら困ると思い、「危険だから、やめなさい!」と腹立たしくもあって注意すると、「コンセントが足りない!」と反撃されてしまいました。

そりゃそうだ、子どもの言いたいこともよく分かります。
コンセントの配置(レイアウト)が悪いのです。
「子ども室には、2コもあれば足ります」といっても…、1ヶ所に固まって設けられていては、延長コードを使わざるを得ません。

「何という、レイアウトだ」と嘆いても後の祭り。竣工してからコンセントを増やすことは工事上大変難しく、調査しながらコンセントを増やすことになりますのでお金もかかります。
そして更に、延長コード(たこ足コンセント)へ想定以上のプラグを差し込んだ場合に、何が起こるかご存知でしょうか?

ご想像の通り、電気容量の上限を超えると、延長コードから発火して火災を招く恐れがあります。また、差しっぱなしにすることでホコリが溜り、そこに湿気が加わると発熱して火が出ることにもなります(トラッキング現象)。
確かに、これも危険な行為ですね。

我が家のお掃除は、いつも大変!

我が家では、こんな困りごともあります。

掃除機用のコンセントに、他の器具のプラグが差し込まれている!…なんで?
季節によっては、扇風機や加湿器、時には空気清浄機などが追加されます。そうです、そのコンセントを確保していなかったのです…、すっかり忘れていました!

そんな時に、「失敗した、住まいにくい家をつくってしまったなぁ…」と思うことがあります。我慢して住むしかないのでしょうか?取り敢えず、扇風機の差し込みプラグを抜いて、掃除機のプラグを差す。お掃除が終わったら、もう一度指し直す。面倒な作業、それもコンセントは床に近い位置にあるので、いちいちしゃがみ込まなければならない。ウーン、疲れるなぁ…、たこ足コンセントを買ってくるか?

電気、デンキ・・・ブレーカーは何処だっけ?

何と、今度は電気が落ちた!
掃除機をコンセントにつないでスイッチを入れた瞬間に、炊飯器が止まった!「ご飯が…、ブレーカーは何処だっけ?」容量オーバーということなのだろうか?

しかし、何という設計だろうか。もうこうなったら、建てた住宅会社を呼ぶしかない!
電気は、ありがたい!こんなに便利な日々が…?ところが、皆さん想像してください、当たり前が当たり前でなくなったら、「この家は住みにくい?」ではなくて、「この家に住みたくない!」と思うのではないでしょうか。

コンセントのレイアウトで住まい心地が変わる!

さて、このような事件?をおこさないためには、「コンセント計画」が重要となってきます。今回は、その解決策をご案内して終わりたいと思います。

先ず、コンセントの数量確保について説明いたします。

私たち設計屋は、コンセントの使い方を2つに分けてお施主さんと打ち合せをおこないます。その2つとは、専用コンセントと多目的用コンセントのことです。

専用コンセントとは、家電製品(テレビ・冷蔵庫など)や設備機器(エアコン・換気扇など)の1台1台専用に使うコンセント。

多目的用コンセントとは、携帯電話の充電、パソコン、掃除機や季節物の扇風機などに使うコンセントです。それを、一つひとつ確認していきます。

専用コンセントは、「機器の数量」ですから、住まいでは何を使うか。あるいは、将来において追加して使う可能性があるかどうか。確認して数量と設置場所を決めます。

多目的用コンセントの数量(差し込み口数)の確認は、やや厄介です。基本は、「同時に何台使うか」を部屋やスペースごとに確認するのが良いでしょう。例えば、子ども室で使う物は、机のスタンドライト、パソコン、携帯の充電器、ゲーム機器に加えて掃除機などがあります。如何でしょうか、コンセントの差し込み口が4ヶ所(2口コンセント×2)あると足りませんか。

次に、コンセントのレイアウト(配置)について説明いたします。

挿絵

考え方は、絶えずコンセントを「対角線」上に設けることです。

それも、出入口を中心に振り分けてみてください。それによって、延長コードを使うことが無くなり、丁度よい具合に配分されることになります。

また、掃除機用のコンセントは、出入口の近くが良いです。
家具などを置かれてしまってコンセントが隠れてしまうことが少ないことと、プラグを差したままで隣のスペースも掃除機を掛けることができて便利だからです。もちろん、専用として差し込み口を1ヶ所開けておいてください。これで、掃除のストレスが無くなりませんか。

この様に、コンセントの数量とレイアウトを決めてください。数量が、最初に分かっていると、ブレーカーが落ちることのないように、程よく電力を分配した電気設備の設計ができます。当然ながら、危険な「たこ足配線」をすることもなくなります。

皆さん、如何でしたでしょうか。
たかがコンセントですが、コンセントひとつで「住まい心地」が変わります。コンセント計画については、お互いが納得するまで十分な時間を取って打合せしてください。

その結果、「クレーム」「トラブル」がなくなります。

次回は、「日々を安全に暮らす、暮らしのシーンを創り出す照明計画」について詳しくご案内いたします。皆さん、ご期待ください!

YU_GRAM
松浦 喜則
一級建築士 / 遊建築設計社 代表松浦 喜則

平成4年、遊建築設計社を設立。「住まいの文化座」を主宰し住宅会社の設計や、 営業マンに提案ノウハウを伝授。合理的で、簡単なプラン提案の手法は好評。年間500棟のプランニング実績から生まれた、接客用ツールを開発。

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