デザイン性豊かな家づくり
モダンデザイン・フラットルーフ(その2)
皆さん、こんにちは!遊建築設計社の松浦です。本日は、2階建てフラットルーフの建物のつくり方を、更に詳しくご案内いたします。
インパクトは、セットバックとオーバーハングで!
では、フラットルーフの「積み木の家」に、量感を与える方法をお伝えします。
カタチに量感を与えるのは「影」が重要な役割を果たします。
例えば、建物の「軒先」がつくる影を思い出してください。建物を見て、奥と手前にある外壁の位置関係を見分ける方法は、影の長さによって判断されます。軒先のラインが同じであれば、奥にある壁ほど影が長くなります。私たちは、その陰影によって、建物の大きさや重み、時には厚みをも感じています。
しかしながら、フラットルーフの建物には軒がなく影をつくることができません。
「積み木」というブロックを重ねただけでは、表現力を高める深みを演出することができないのです。
そこで、2階のブロックを1階のブロックより後ろに下げたり(セットバック)、
前に出したり(オーバーハング)して量感豊かな表情を醸し出すようにしています。
例えば、左右どちらかのブロックをセットバックさせて、移動しなかった隣のブロックの外壁側面に日影をつくる。或いは、オーバーハングさせて1階の外壁面に影を落とす。そのように、様々な工夫を凝らし、単調になりがちな外観に抑揚を与えてインパクトのある外観デザインを完成させます。
窓がもたらす建物表情の表現!
また、フラットルーフの積み木の家を、よりモダンなデザインとするためには、窓の型式(開閉方法)やプロポーション(縦横比)とその配置が大切です。前回お話ししたように、「モダン」とは、「和風」でも「洋風」でもないデザインのことと位置付けています。従って、用いる窓は、和風の襖・障子から想像される幅広の「引き違い窓」や、洋風の組積造(そせきぞう)に組み込まれる縦長の「上げ下げ窓」ではありません。
今まであまり見たことのない「新たな感覚を持たせるような窓」を使うと良いです。
例えば、風を通すことのない大きくスクエアな「嵌め殺しの窓(FIX)」、極端に細い「ヨコ滑り出し窓」や「タテ滑り出し窓」、小さな窓を幾つか組み合わせリズミカルに整えた「窓群」がよりモダンなデザインへと導いていきます。
但し、窓をむやみやたらに設けると度を超えてしまい、デザイン性が失われてしまいます。やはり、そこには秩序が必要です。図のように、上下階の窓位置を合わせたり、窓の幅を合わせたりして整えることを試みてください。モダンとはいえ、落ち着いた安定感のある建物になります。
外壁の仕上げを選ぶ!
更には、外壁の仕上げ材もモダンデザインを形成する上では重要となります。
一般的には、1階も2階も、同一素材で仕上げる方がまとまりよく見えます。塗り壁ならば全てを塗り壁に、サイディングならば全てをサイディングに統一した方が違和感なく映ります。もし、上下階の仕上げを変えるならば、1階に重厚感のある石やレンガで仕上げ、2階にはそれより軽い材料の塗り壁やサイディングで仕上げる方が安定感のある建物になります。
しかしながら、基本を理解した上で新たな試みを加えていくのがモダンです。
パースのように、1階の一部に軽い素材の木製サイディングを張り、2階にはその素材より重い塗り壁を施すのもモダンなデザインをつくるコツともいえます。もちろん、重量のバランスはあります。1階に木製サイディング、2階に自然石とする組み合わせは材の比重があまりにも違いすぎてアンバランスとなってしまいます。避けてください!
皆さん、いかがでしたでしょうか。水平に切り裂くスカイラインと、ブロックを積み重ねる積み木の家のモダンなフォルム。そして、単調になりがちな建物にインパクトを与える陰影に新感覚の窓、外壁の仕上げまでもがモダンなデザインを構築していきます。
この様に、構成する要素はたくさんありますが、一つひとつ丁寧に整えていくと自然に意図する外観をつくることができます。確かな造形力を養って、デザイン性豊かな家づくりに挑戦してみてください。
- 一級建築士 / 遊建築設計社 代表松浦 喜則
平成4年、遊建築設計社を設立。「住まいの文化座」を主宰し住宅会社の設計や、 営業マンに提案ノウハウを伝授。合理的で、簡単なプラン提案の手法は好評。年間500棟のプランニング実績から生まれた、接客用ツールを開発。