2021年10月15日

近隣への配慮が大切!「家づくりに潜むクレームとトラブル」

皆さん、こんにちは!遊建築設計社の松浦です。
今日は、家づくりを進める中で起こる「クレームとトラブル」についてお話しさせていただきます。

私たち遊建築設計社では、お施主さんとの間で問題にならないように、様々な事例を挙げて対処方法や根拠をまとめた「YU-GRAM」という家づくりのルールを定めています。そのルールを基に、ヒアリングをさせて頂き、プランニングに活かし、そしてプレゼンテーションを行っています。

これからお話しする内容は、ルールブックに記載されていることであり、私たち設計事務所が常に実践していることです。

家づくりをする方に必ず役に立つことですので、最後までお読みください。

第6回 大変、お隣さんからクレームが!

住まいを建てる時には、隣地への配慮がとても大切となります。
特に、既存の住宅地に土地を購入して建てる場合には、当然ながら隣地にお住まいのご家族構成や、生活スタイルなど何も知りません。

その様な中で、お隣さんに気遣いながら、お施主さんの暮らし方を考えて決めたプランが、相手には全く理解されないこともあります。生まれも育ちも異なるわけですから、現実には、お互いの常識が多少異なるのは当たり前なのです。ご近所づきあいは、一歩間違ってしまうと大変な騒動を起こしたり、住んでから不仲な関係となってしまったりします。家を建てて住まうということは、何十年もその地で、周辺の方たちと争うことなく穏やかに暮らしていくことです。

本日は、近隣への配慮不足でクレームが舞い込むことがないように、私が設計者として今までに体験したことをお伝えしたいと思います。よくあるお話しですので、最後までお読みください。

すみません、間取りを見せて貰えませんか!

ある時、隣地にお住まいの方から工事現場の監督に、「間取りを見せて頂きたい!」という申し入れがありました。現場監督は、その場で判断せずに、後日ご連絡をすることにしたそうです。

お施主さんのプライバシーに関わることですので、その対応は良いかったかと思います。しかしながら、隣地の方が不安を抱くのも分かります。隣りに家が建つことで、住まいの環境が変わり、暮らし方を変更せざるを得なくなることもあるからです。皆さんも同じ状況になれば、たぶん同じ行動をとりたくなるのではないでしょうか。

私ども遊建築設計社では、可能であれば、お施主さんのご了解のもと、着工前の近隣ご挨拶の時に図面をお見せした方が良いと考えています。即ちそれは、近隣への配慮を明確にして同意を得るための行為なのです。もちろん、その時に図面を渡すことはしません。平面図や立面図などの基本図での説明で十分かと思います。

仮に、工事が始まってからのクレームで計画変更が生じたら、工期の延長や工事費の追加が発生するなど、その影響が多岐にわたってしまいます。そしてそれを防ぐのは、何よりもそこに住まうお施主さんのためなのです。

皆さん、早めの近隣説明を心掛けてみてください。

あの大きな窓のある部屋は、何の部屋ですか?

工事中に隣地にお住まいの方から指摘されて、小さなクレームが大きなトラブルに発展しそうになったことがあります。

建物の北面に、なんで大きな窓があるのですか?

建設地の北側敷地にお住まいの方にとっては、敷地の南に建てられる建物は気になるものです。それは、自宅リビングの大きな掃き出し窓から、家の中の様子が丸見えになってしまうことも関係しています(図1)。

(図1)

間取り

南に面した明るい窓、なんでカーテンを閉めて生活しなければならないの?

一時的に使用するトイレや浴室ならば止むを得ない、その窓から外を眺めることはあまりしないだろうと思うでしょう。

しかし、それが寝室ならば別です。
長時間にわたって過ごす寝室の窓が、こちらに向かって大きく解放されていたり、その窓に透明ガラスが使用されていたりするのはもってのほかとなります。窓を取りやめるか、小さくする。あるいは、型(くもり)ガラスのはめ殺し窓。通風のためにどうしても開閉したいのなら窓に目隠しを設けて頂きたいと告げられたことがありました。

隣地の方にしたら、建て主への当然の要求と考えていらっしゃる方が多いようです。後から建てる建物によって、今まで住んでいた環境が変わり、先に住んでいた自分たちが、なぜカーテンを閉めた生活を送らなければならないのか。感覚的なこともありますので、これは難しい問題といえます。
やはり、これも事前確認が必要だったと思っています。

浴室や脱衣室に向かって、窓を設けないで!

これは、配慮に欠けていた!と若いときに反省したことです。
隣地の浴室や脱衣室の正面に、計画した建物の窓が・・・、
非常識です!と怒られてしまいました。

今思うと当たり前のことです。
暮らしを考えた間取りの計画で、止むを得ず窓と窓が平面的に重なるのであれば、隣地の窓と高さを変えておくような配慮が必要だったと思いました。

即ち、隣地の窓と同じ高さにならないように、トップサイドライトにしておけば、視線が隣の建物内へ通ることなく、求めたスペースの明るさが確保できます(図2)。
まだまだ経験が足りなかった時代です。

(図2)

間取り

娘の部屋の窓と、同じ位置に窓があります!

窓と窓が重なるといえば、こんなこともありました。
2階の部屋の真向かいに寝室の窓が・・・、窓を移動してください!

窓を移動して欲しいなんて、自分勝手な言いぐさと感じるかもしれませんね。
しかし、それもそのはず、お隣の部屋は、お嬢さんの部屋だったのです。都心の密集地、隣棟間隔(建物と建物の間の距離)は、2メートル弱です。窓を開けると手が届きそうな距離に、お施主さんの息子さんの部屋を計画してしまったのです。

設計者は、そこまで考えるべきなのだろうか、そこまで責任を持つべきなのだろうか。と思われるかも知れませんが、そこに住まう方たちにとっては、生活に支障を与える重要な問題なのです。
お施主さんにも、お隣さんも頭を下げ、工事関係者にも急ぎ説明をして是正をおこないました。関係者の皆様に大変なご迷惑をおかけしたことを今も思い出します。

私たちの業務には、現況調査の中に周囲の環境を注意深く確認することが含まれています。
現地確認を行うことは当然のことですが、あらゆる情報を描き込んでおく現況測量図を事前に作成しておくことも必要です。その測量図に、周囲の建物はモチロンのこと、その建物の窓の位置も計測して表示しておけば、前述のようなトラブルは未然に防げたはずです。

その他にも、視覚的な問題だけではなく、隣地への日当たり不足や、騒音、敷地間の高低差による安全性など周辺環境に配慮した家づくりが、今とても重要なことと受け止めています。

皆さん、そこに住まうのはお施主さんです。
近隣に対して、是非、気遣いのある環境を整えた建物計画を進めることもお勧めします。

次回は、「止むを得ない、階段下のトイレ!」と題して、トイレを設ける場合の注意点について詳しくご案内いたします。
皆さん、ご期待ください!

YU_GRAM
松浦 喜則
一級建築士 / 遊建築設計社 代表松浦 喜則

平成4年、遊建築設計社を設立。「住まいの文化座」を主宰し住宅会社の設計や、 営業マンに提案ノウハウを伝授。合理的で、簡単なプラン提案の手法は好評。年間500棟のプランニング実績から生まれた、接客用ツールを開発。

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