駐車スペースの大失敗!【家づくりに潜むクレームとトラブル】
皆さん、こんにちは!遊建築設計社の松浦です。
今回は、家づくりを進める中で起こる「クレームとトラブル」についてお話しさせていただきます。
私たち遊建築設計社では、お施主さんとの間で問題にならないように、様々な事例を挙げて対処方法や根拠をまとめた「YU-GRAM」という家づくりのルールを定めています。そのルールを基に、ヒアリングをさせて頂き、プランニングに活かし、そしてプレゼンテーションを行っています。
これからお話しする内容は、ルールブックに記載されていることであり、私たち設計事務所が常に実践していることです。
家づくりをする方に必ず役に立つことですので、最後までお読みください。
▼プランづくりのルール「YU-GRAM」に関してご興味ございましたら、下記ホームページよりご確認頂けます。
https://lbyu-net.com/bunkaza/yu_gram/
駐車スペースの大失敗!
本日は、『車はあると便利、周りにゆとりがないと不便、駐車スペースの計画』について、お話ししたいと思います。
皆さん、車があると助かりますね!
雨の日の駅までの送り迎え、やや遠いセール中のスーパーへの買い物、手では運べない量の荷物を運ぶ。それに、車があると家族みんなで遠出するにも電車の時間を気にせず、荷物も積んで移動できます。
敷地にゆとりがあるなら、車の維持費を賄えるのなら、是非、一家に1台あるいは家族それぞれに1台の車が欲しいものです。
しかし、いつでも自由自在に車を出し入れできないとストレスとなります。
車のドア先15cm?・・・・・ムリ、絶対無理!
今までは、軽自動車に乗っていましたが、家族が増えたこともあって、7人乗りの三列シートSUV車に買い替えることになりました。この車なら、一度に両親と家族を載せて移動できるだろうし、家族みんなの荷物を積んでキャンプにも行けるだろう、海や山へと行動範囲が広がって楽しいひと時が過ごせるだろう、というのが検討の理由でした。もちろん僕自身も、一度は大きな車に乗ってみたいと思っていました。
そして、ここで問題が起きたのです!
私たちの家の駐車スペースは、2~3台分の自転車置き場と玄関に至る通路を含めて確保されていました。実際に測ってみると、奥行き寸法は、中型車が十分に入る5mあったのですが・・・、
「幅」が足りません!
現状のスペース幅を確認してみると、自転車を縦に止めて幅600mm、その横に玄関に至る通路幅が物の出し入れも考えて1,200mm軽自動車(W=1,480mm)、その先の塀までの車への出入り通路が500mmでした。スペースの合計幅は、3,800mmです。
乗りたいと検討していた、7人乗りの三列シートSUV車のサイズは、 全長4,600mm×全幅1,850mmです。このSUV車に変更すると、3,800mm -600mm -1,200mm -1,850mm=150mmとなります。数字ばかり羅列して申し訳ないのですが、塀と車との間が15cmしかありません。
当然ながら、この寸法では、塀側を車への出入り通路としては使えません。
それどころか、助手席に乗っている人は、駐車スペースに車を入れる前に道路上で降ろさなければなりません。車の往来を考えると、これは危険なことです。
そして、更にクレーム!
妻は、「私の運転技術では、塀に15cmまで寄せることは無理!」と言っています。
そうなると、我慢してもう少し小さい「ミドルサイズSUVかミニバン」を検討するしかありません。ミドルサイズの車なら、塀と車との間が15cm足されて30cmくらいとなります。
住宅会社さんには、家を設計する時に、「将来は大型車に乗るかもしれないから駐車スペースを確保しておいてください」 とお願いしていたのに、・・・とても残念です!
車を、あと何回切り返せばよいのか!
また、前面道路の幅員と駐車スペース幅の関係が分からず、こんな結果を招くこともあります。いざ、駐車しようとしたら、
私は、人より運転が下手なのだろうか・・・
「車を何回切り返しても、上手く駐車スペースに入れられない、・・・今日もだ!」「誰でも、簡単に入れられるのだろうか?」疑問に思うのは私だけだろうか・・・。
住宅会社さんからは、「前面道路の幅員が4.0mありますから、慣れれば問題なく駐車できますよ!」と言われましたが・・・、もう少し敷地が広かったら、あるいは建物の床面積をもう少し小さく抑えていたら駐車スペースにゆとりが持てたのに・・・、もう遅い!
建物が出来上がってからでは遅すぎますね、・・・悔いが残ります!
ここで、勘違いがあります。
道路の幅員は、法律の中で4.0m以上確保することと定められていますが、4.0m以上としているのは、周辺の環境を維持することと同時に、災害時などの救助や避難を考慮して決められたものです。決して、駐車スペースから道路へ出入りするために必要な道路幅を決めたわけではありません。
即ち、前面道路の幅員が4.0mあれば駐車できるという考え方は間違っています。
更に、駐車する車のサイズに、両サイドの乗り降りする通路幅を加えておけば駐車できるというのも間違いです。それは、駐車した後に必要なスペースのことです。
駐車スペースを設ける場合に大切なことは、前面道路の幅員に合わせて「駐車スペースの幅」を確保することです。タイヤが描く軌跡(回転半径)に車のボディラインを加えれば、駐車するために必要な寸法を割り出すことが可能になります。
図のように、中型車を止める場合には、前面道路が4.0mであれば駐車スペースの幅は3.7m。同様に、5.0mであれば2.8m、6.0mであれば2.5m必要になります。
場合によっては、駐車スペースの入り口部分だけ確保してもよいということになりますので、後退して後輪を通過させる部分だけ広く(隅切り)しておくだけでもよろしいのです。
道路内に、電柱が立っている!
時には気づかなくて、うっかり道路上の障害物を見落とすこともあります。例えば、道路にある電柱です。
えー、敷地の前に電柱があったっけ?
・・・家を建てるとき目安にした現況測量図にはなかったはず?
現地確認をしなかった住宅会社が悪かったのか、一体全体誰の所為(せい)?
ここにある電柱は、本当に厄介です。バックで駐車スペースへ入れるときに、車のフロントが電柱に当たりそうになって、切り返しが多くなってしまいます。いくらパワーステリング機構が付いていて車の操舵性をアシストしてくれても、何回も切り返すのは大変です、・・・イライラの原因ですね!
この場合は、道路上にある対面の電柱と駐車スペースの入り口ラインが、道路の幅員をみなして、駐車スペースの幅を決めておくとスムーズに車を移動することができます。
車はあると便利であるが故に、駐車スペースの取り方でクレームにもなります!
車は、一家に1台ではなく、住まう人の数に加えて、できれば訪問客用にも1台欲しいなどという計画条件をいただくことがあります。本当に誰に聞いても、車の存在は、とても便利でなくてはならないモノになってきています。その分、クレームやトラブルの火種になることもあるのです。
住まいを計画する私たちは、現在所有している車種だけではなく、将来において乗りたい車や台数を確認する必要があります。更に、可能であれば、クレームを招かぬために前面道路や周囲の状況を把握した上で、多少のゆとりを持たせた駐車スペースを提案するべきです。
次回は、「危険、玄関ポーチと道路との高低差」について詳しくご案内いたします。皆さん、ご期待ください!
- 一級建築士 / 遊建築設計社 代表松浦 喜則
平成4年、遊建築設計社を設立。「住まいの文化座」を主宰し住宅会社の設計や、 営業マンに提案ノウハウを伝授。合理的で、簡単なプラン提案の手法は好評。年間500棟のプランニング実績から生まれた、接客用ツールを開発。